西暦593年、楊堅はある宮女のもとに臨幸された。独孤皇后は知ると、人を引き連れ仁寿宮へ行き、直接宮女を棍棒で打ち殺した。楊堅は怒って馬に飛び乗り、20里(10キロメートル)を暴走したが、怒りが静まると、彼はため息をついて、皇后に誤りを認めた。

隋の文帝楊堅が、一生畏れた女性は、独孤皇后であった。

彼らは史上有名な鴛鴦(おしどり)夫婦で、2人は5人の息子と5人の娘を生んだ。二人が結婚した時、楊堅はまだ皇帝には上がっていなかった。

当時楊堅の父親楊忠は軍事貴族で、権勢があり楊堅はその嫡男であった。独孤迦羅の父親は独孤信で、西魏八柱国の大司馬(軍事長官)で北周時期には衛国公に封ぜられた。

従って、楊堅と独孤迦羅の結婚は、家柄の釣り合った、強い絆なに属す。

しかし彼らは乱世に居り、結婚して間もなく、独孤信と宇文護の闘争は失敗し、自尽に迫られ、独孤の家族はこれから衰退した。また楊家も巻添えにあった。

貧乏人の夫婦は何事も哀れというが、楊堅は妻を足手纏いと厭うことなく、帰って、唯一無二の存在となり、この世で別の女性が自分の子を産むことはないだろうと誓った。

これは大変重要な宣言であった。

古代の婚姻制度は一夫一妻多妾制度で、妾を持つことは美貌だけでなく、後世を繁栄させる能力であった。

しかし楊堅は、自分は独孤迦羅にしか子供を産ませないと誓った。

これは一生妾を作らないという約束より些か難しかった。

愛情は金銅よりも固く、二人は共に困難な日々を歩んできた。当時楊堅の娘婿の宇文贇に監獄へ幽閉され、命を糸に繋ぎ、独孤迦羅は身を挺して、宮廷に赴き、宮門で叩頭して謝罪し、擦り付けた頭からは潜血を流していたので、世間を騒がせ皆知ることとなった。

しかし、独孤迦羅のこの行いで、本当に夫の一命を救ったのである。

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宇文贇が亡くなるのを待って、楊堅は新皇帝を補助するか、やはり兵を起こし造反するかどうか迷っていたが、独孤迦羅は素早く決断し、夫の手を握り、「大事は巳然なり(起こった)、獣に騎るの勢いは、必ず下すを得ず、これに勉めよ」と言った。

この話の意味は、現在楊家はすでに権勢が天にまで登り、幼主を補佐しても、うまくできないということである。これに代わり、自分が皇帝にあたるのがよかった。

このようにして、楊堅は兵を起こし、隋朝を建立し、独孤迦羅は自動的に皇后となった。

この年、迦羅はもう38歳であったが、楊堅はまだ大変彼女を愛しており、基本的に後宮は虚置(名目上の設置)となり、却って、迦羅も女官制度の制定に参与が認められるという、歴史的先例も開かれた。

婦女官製は、つまり女官制度で、宮内の職務を担当した女性(正職員を指す)を包括するばかりでなく、皇帝の正妻と妾の昇進と階級なども包括した。歴史的には独孤迦羅が初めてこの事に干渉できた女性であった。

これは、皇帝が皇后の朝政への参与を許可し、ひいては自分の後宮を完全に放棄したという意味である。

これは楊堅の態度で、彼は天下を独孤迦羅と共に分かち合いたかった。

しかし、年齢を増すにつれて、楊堅は異様な興味を持ち始めた。

人は誰もが美を愛すが、楊堅も例外ではなかった。

それどころか、彼は皇后の病気の隙に乗じて、密かに尉遲迥孫娘を引きずり込んで、刺激的な遊戲を展開した。

尉遲迥もまた面目のある人物で、彼はかつて楊堅が皇帝を名乗るのを強力に阻止したが、兵は敗れて俘虜となり、彼女の孫娘は淪落して宮内女官となり、宮中に没入して苦役した。

楊堅は彼女の姿が秀麗であるのを見て、一瞬で我慢できなくなった。

翌朝早朝迦羅は知らせを受けて、きりきりと歯を食い縛って怒り、自信が病中であるのも顧みず、直接人を引き連れ仁寿宮に行って。

その時、楊堅は朝参しており、朝参から戻って、昨日の美人が血の海に横たわるのを見て、すぐさま激怒した。

しかし独孤迦羅は少しも怯むことなく、「私はあなたが美色に溺れて、国事を誤り、下作しかできないが怖いのです」と口答えした。

楊堅は言葉を詰まらせたが、一国の君主でありながら、自分の女性すら守れなかったのは、実に窮屈な事であった。

彼は激怒して馬に跨り、20里(10キロメートル)余りを疾走したので、驚いた全文武官はあらゆる場所で捜索した。

独孤迦羅も大変起こったが、更に傷心が深く、彼女は、当時自分に惚れていた夫が、なぜ今になって小さな女官のために、自分自身に対して腹を立てたのか、理解できなかった。

しかし、迦羅の傷心は長く続かなかった。

間もなく、気を静めた楊堅が、会いに戻って来て、迦羅に対していろいろ謝り、二人はもとのように仲直りした。

尉遲迥の孫娘のほかに、楊堅は宣華夫人を寵愛していた。南陳の宣帝の娘で、国が滅んで宮中に入れられた。

しかし、幾ら臨幸しても、楊堅は子を産むことを許さなかった。

当時、彼は独孤迦羅に対して、「異生の子がない」承諾に対して、一応守った。

楊堅が独孤迦羅を恐れたのは、愛のためではなく、独孤家の権勢のためだと言う。

しかし、私はそれを考えるのは浅はかすぎると思います。

古来、苦難を共にすることは容易であり、幸福を共にすることは困難であった。花を咲かせるの後に妻を捨てて子を捨てるのは何処にもあった。楊堅は皇帝になって、手は天下を握って、後期になって、更に大権を握って、彼はどうして一人の父母共に亡び、全身の栄辱はすべて自分の妻に頼ることを恐れるのですか。

臆するというのは、忍びないだけのことである。

忍びないだけのことは、愛ゆえである。

帝王として、宮女に臨幸するのは当たり前のことだが、皇后が駆けつけてきて直接宮女を処刑するのは、もともとの道理がよくない、楊堅は怒っているかもしれない、彼は罪を問わないで、帝王の威で圧力をかけないで、自分で「家出した。」

内心の奥深くでは、彼は迦羅を傷をつけることを惜しんでいたと見るべきである。

独孤迦羅の死後、宣華夫人は寵愛を独占したので、楊堅はこの女子を気に入っていたことわかるが、しかし独孤迦羅が生きていた頃には、彼は名義さえも宣華夫人に与えなかった。

後盾のあるものは偏愛されるという言葉がある。

あのような封建時代には、惚れこむということは異常で、また楊堅は完璧な人間でもなく、若い娘に引かれるのも実は正常な事であるので、彼の迦羅に対する愛を否定することは、少々行き過ぎであった。

なにしろ、独孤迦羅は嫉妬深く、人を容赦する度量がなく、どうしてこれまで楊堅の放任と黙認がなかったと言えるのであろうか。

一方で「嫉妬」、一方で「放任」であった。

彼らの感情は、我々の想像よりも確固たるものであったのかもしれない。