1930年、20歳の才女張兆和は、胡適の事務室で顔を真っ赤にして沈従文に「私は頑固として彼を愛さない」怒鳴り散らした。胡適は却って「私はあなたが彼に嫁ぐことを勧める」と言った。

沈従文は張兆和に対する愛情は大変固執していて、まるで彼の作品が固執しているようであった。

沈従文は湖南鳳凰県の生まれで、小学校を出ただけで、14歳で軍に入隊し、20歳で退隊したが、執筆の夢は忘れていなかった。

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彼は北京大学を受験しようとして、すぐさま北京へ行った。

しかし北京大学を受験することは、容易なのであろうか。彼はまた経済力もなく、日々は大変辛苦した。

沈従文はいろいろなことをしたが、唯一放棄しなかったことは、毎日北京大学に行って講義を聴講する事であった。

彼は中国文学科を受験したが、合格できず、小学校しか経験のない彼は、歯を食いしばりながら、文章の書き方から学び始め、続々と『晨報』『現代評論』に文章を発表した。

その後、彼は『長河』『辺城(国境の町)』など人口に膾炙した小説を次々と執筆した。

彼の才能は、大変多くの人の称賛を得て、徐志摩も彼に対して絶賛した。胡適は当時中国の公立学校の校長であり、彼はこの事を知って、沈従文を学生に授業をさせる為に招待した。

中国民国の乱世では、書物を手にして読める者は、一般家庭には全くなかった。

沈従文は小学校の学歴しかなく講義に通い始めた頃には、プレッシャーが大変大きかった。

当初、彼は講義は一時間で終わると思っていたので、一時間分の準備しかしなかったが、その結果は、緊張のあまり、ニ・三の言葉で準備してきた話しを終えてしまい、黒山の人集りの前で一度も話し出すことがなかった。

上手く喋れない先生が、人に尊敬されることは難しかった。

幸いなことに、沈従文には作品があり、胡適も彼を支えて、ようやく彼は教壇に適応し初め、しかも彼の過去の軍隊での経歴も、学生に更に多くの啓発を与えた。

胡適の沈従文に対する幫助は、事業上の力限りの支援に留まらず、彼は沈従文の結婚問題にも関心があった。

当時の婚姻は、父母の命や、媒酌人の言葉を信奉しており、胡適でさえも海外に留学する前に、母親から大の一字も読めない妻を当てがれた。

沈従文は出身は高くなかったが、若い頃から参軍し、婚姻の年齢を逃したので、却って当時の才能ある男女が憧れた「自由恋愛」に進むことができたのである。

胡適は常々沈従文に、自分の終身もっと大切さにしなさいと勧めたが、沈従文は家庭環境の良い才女張兆和に一目惚れした。

張兆和は英語系の学生で、家系はよく、多才多芸で、講義の関係で沈従文と彼女は一面識の縁で、一発で恋の罠に陥り、完全に抜け出せなくなった。

彼は一通一通張兆和にラブレターを送り始めた。

張兆和は容姿才能に優れ、彼女に追従する男子学生は数知れなかったが、沈従文のラブレターだけが彼女を激怒させた。1930年、20歳の張兆和はラブレターを手に胡適の事務室に駆け込んで、書面の「私はあなたの人格だけでなく、私はあなたの肉体が欲しい」ということを指さして、沈従文の自分に対する侮辱を怒りなじった。

胡適は厳しい表情で、張兆和の言い分を聞いていたが、ようやくのこと、彼は眉を緩めて、柔かに、「私は君に彼との結婚を勧めるよ、彼は固くなに君を愛しているよ。」と言った。

張兆和が校長事務室に来たのは、その本意は胡適に自分を支持してもらうためであったが、思いもよらぬことに、彼は以外に自分に沈従文との結婚を勧めたのであろうか。

張兆和は大変腹たたく、「私はてこでこも彼を好きにはならないです」と怒った。

言い終わると、彼女は席を蹴って出た。

彼女が去ると、胡適は沈従文を読んで、重々しく心を込めて、「私は、彼女本当に君を理解していないので、君に諦めることを勧める」と語った。

しかし沈従文は頑固で、また、彼の生まれには、湖南人生まれつきのぶれない軸があり、目的を達成するまで、諦めないものがあった。

彼はそれでも一通一通張兆和にラブレターを書き、自分の愛慕を伝え、果ては、大多数の人は君王の足下にひれ伏して奴隷になりたいと願うだろうと書いたが、彼は張兆和の奴隷になりたかっただけである。

あるいは、女性のやはり心が柔軟なのかもしれない。

1933年に23歳の張兆和は沈従文に嫁入りし、この年、沈従文は天地から大喜びで、まるで世界で一番の美しいものを得たようであった。

惜しむべきは、美しい事物が、線香花火のように張兆和は立派な家の出身で、家柄もよく、物資生活も更に優渥であったが、沈従文に嫁いでから、彼女は家事を始めたが、沈従文の原稿料が少なくなかったが、支出も少なくはなく、本当に残るお金は更に少ないことにやっと気づいた。

生活が困窮して、張兆和は裕福な生活を捨て去り、自分で家事をするようになり、自分の身支度に気を使わなくなり、気持ちを夫と子供の身上に置いた。

しかし沈従文は作家であり、作家には霊感(インスピレーション)の啓発が必要であった。

これ以前には、張兆和と彼の女神は、女神が手を洗いスープを作ると、彼は別の女性の体に遇いを求めたい衝動に駆けられるようになった。

彼は当時張兆和への恋に迷ったように、女学生の高青子に恋した。

しかし、沈従文の好意は、精神上に留まるだけで、行動的に付されることはなかった。

だが高青子の面影が、脳内で忘れなくなると、沈従文混乱して、彼はどうして良いかわからなくなった。親友の林徽因は、夫婦の間には秘密が有ってはいけないと彼に訴えたので、そこで、沈従文は自分の心を妻に暴露して聞かせた。

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張兆和は知ると、雷に打たれたように衝撃を受けた。

彼女はプライドを捨てて、彼の妻となり、彼を心の底からの人としていたのに、今では、彼は自分から別人に対して心を動かしたというのであろうか。

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もし張兆和が普通の家庭の娘であったら、あるいは大目に見たのかもしれないが、彼女は才気あふれる有能な女性で、当時彼女を求める男性は数え切れなかった。

彼女の心は、瞬間に冷めて、夫の弁解も聞こうとせず、決然と家を出て、引っ越してしまった。

張兆和と別れてから、沈従文はやっと正気に戻り、自分がもう持っているものが惜しいことを忘れていたという、自分の本心を発見した。

彼は、彼女の許しを請うために、妻へ手紙を書き始めた。その後、沈従文は危篤となり、張兆和がそれを知ってから、やっと引っ越してきて、彼の歩む一生の面倒を見ることとなった。

臨終の際、沈従文は張兆和の手を取って「君、私は本当に済まなかった。」と言った。

ふと、新鮮感は古びれるが、責任と教養は仲たがいしないという言葉を思い起こした。

ただ、女子は結婚を軽んずることなく、また才能や金銭にこだわらず、人格がとこしえなのが一番であると言いたかった。

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