之罘東観刻石 秦 李斯
維二十九年
(秦始皇帝の)二十九年
皇帝春遊
皇帝は春の行幸で
覽省遠方
遠方をご覧に出かけた
逮于海隅
海の近くに至り
遂登之罘
之罘山に登り
昭臨朝陽
陛下は朝陽に臨み
觀望廣麗
広大で美しい様子を展望した
叢臣咸念
従臣は皆想うのである
原道至明
伝統の道は明らかで
聖法初興
神聖な法が初めて興った
清理疆內
疆域の内を清く治め
外誅暴強
外に強暴を征討し
武威旁暢
武威を周囲に伸ばし
振動四極
四方に震わせ
禽滅六王
六国の王を捕まえ滅ぼした
阐并天下
天下を併合し
甾害絕息
災害を絶滅し
永偃戎兵
永く夷狄を打ち伏せた
皇帝明徳
皇帝の明らかなる徳は
經理宇内
天下を治め整え
視聽不怠
治政の見聞を怠らず
作立大義
人の道義を定め
昭設備器
天下を明らかにして準備を怠らず
咸有章旗
悉く章旗目印をつけて
職臣遵分
職分臣下を振り分け
各知所行
各々に知行させた
事無嫌疑
嫌疑の無いことを專らとして
黔首改化
人民の心を改めた
遠迩同度
遠近無く程度を均一にして
臨古絕尤
古きを貴び
常職既定
人々の職は元来のものとすでに定まっており
后嗣循業
跡継ぎはその仕事に従うのである
長承聖始
すえ永い皇帝の始業を受け
群臣嘉徳
群臣は皇帝の徳を賞賛して
祗誦聖烈
山の神様に皇帝の素晴らしさを誦いあげ
請刻之罘
之罘山に銘文を刻むことをお願いした。
『訳文』
(秦始皇帝の)29年
皇帝は春の行幸で
遠方を巡査に出かけた
東海の浜に幸臨し
之罘山に登り
陛下は初日の出を鑑賞し
広大で美しい様子を展望した
従臣は皆皇帝の恩を想うのである
聖道の威光は至って明らかで
神聖な法がやっと頒布された
疆內の陋習を清く治め
外に強暴を征討し
武威を四海に伸ばし
四方八面を震撼させ
遂に六国の王を捕まえ滅ぼした
天下を初めて一統し
各所の禍災を解消し
永く夷狄を打ち伏せた
皇帝の明らかなる明徳は
天下を治め整え
治政の見聞を怠らず
人の道義を樹立し
種々の器物を設置し
全て等級規章を備えた
大臣は職分を安守し
各々に自身の職責として知行させた
諸事嫌疑を無くした
人民の風俗に移り易い
遠近無く尺度を均一にして
終身法の網に触れず
人々の職は元来のものとすでに定まっており
跡継ぎはその仕事に従うのである
永遠に聖帝の治世を承け
群臣は聖徳を賞賛して
聖名の偉業を敬賛して
之罘山頂に銘文を刻んだ。
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