山東省八主祠の地理位置

「八主」とは、文献では「八神」とも称し、天・地・兵・陰・陽・月・日・四時の八主が祭祀対象である。祭祀場所は山東半島に分布し、天主、地主、兵主は半島の内陸部と南西に位置し、残りの５つは東部沿岸地域にある。八主は古代文献の宇宙観から導入された祭祀に関する活動である。

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いわゆる「八主」または「八神」の概念は、『漢書・地理志』で最も早く見られ、祭祀地点は今日の山東半島に分布した。秦・漢国家的祭祀体系の中で重要な一塁に属し、皇帝自らが主導する中央の祭祀活動であったが、首都近郊の宗廟祭祀のように毎年挙行する事ができなかった。「史書・封禅書」の称することによれば、「皇帝が来臨すれば祭祀し、皇帝が出かけなければ祭祀しない、このように遺跡の規模はまた不確定であった」と記している。文献の記録の八主祠の祭祀に自ら望んだ秦漢皇帝には、秦始皇帝、秦二世皇帝、漢武帝と漢宣帝であり、前漢の成帝に八主祭祀は国家祭祀制度から外れてしまった。その代わり、儒教思想(魯)主導の郊祭制度は、二千年以来の重要な経学内容の郊祭は盛んに行われていた。

この八主祭祀が国家の典礼式典から排除されてから、祭祀場所の本祠は次第に人々から忘却され、八主の祭祀場所は変遷が多く祭祀内容も諸説紛々となった。

天主祠はおよそ臨淄旧城の南にある。市街の南の牛山の麓にいわゆる天斉淵(ふち)があり、泉水が天の臍(へそ)から湧き出るようで、天下の中心と喩えられるので、祭られて「天斉」と呼ばれたが、元の地は完全に破壊されている。

いわゆる八主の祭祀地点は首都や居所に関係があり、臨淄旧城は斉の首都であり、大小両城址があり、大城は遅くとも西周初期、小城は戦国時期の建設で、過去に出土した建築遺物には「天斉」銘の瓦当がある。封禅(天地に感謝する祭礼)と密接に関係のある地主祠は、調査時には具体的に匹敵する祭祀地点は見つからなかったが、文献記載と考古学的調査と、試掘資料の分析で、泰山の東南の梁父城付近にあったはずである。梁父城は前漢時期に建設され、後漢には廃棄された。

兵主祠は、蚩尤(大風雨を起こす戦闘神)を主祭祀とし、その所在地は魯西地区の黄河の氾濫原で早期の遺跡は現在では痕跡も追跡できない。現代の再建は明らかにこじつけの需要から出ており、古代遺跡上に大工事したもので、現代の復元を更に説得力を持たせたものに過ぎない。

陰主祠の、ある莱州三山は海岸の三小山に孤立しており、地上からは東周から北朝時代にかけての遺物を採集されているが、祭祀遺跡は残っていない。

陰主祠周辺の遺跡

陽主祠は煙台市の東の芝罘島に位置し、情況が許さず、祭祀遺跡は今一歩作業が展開していない。現在は清代の陽主廟の芝居舞台などの一部分の建築が残り、本殿前からは嘗て二組の祭祀玉器が出土している。芝罘島大疃村山前沿海台地の、玉器出土地点の西北700メートルの所からは東西150メートル、南北40メートルの漢代の遺跡が発見され、遺物には漢代の半瓦当、敷地磚などの建築材料は一般住居に用いるものと異なり、陽主祠に関係する建築に属するものである。

八神陽主廟碑文拓片

調査員は保存状況の良い月主、日主祠の遺跡の保存に対して詳細な調査と発掘作業を行い、秦漢時期の祭祀遺跡と相対する整った配置と組み合わせの形式を得ている。

月主祠の所在地は帰城にあるが、帰城は当地莱国の人の都城で、始建の時代は西周中期を遡ることはないが、莱国消滅後も城ととして使用され、下限は戦国時期までになるかもしれない。月主祠は龍口市帰城の外城内の莱山の中腹にあり、戦国時期に建築が存在し、前漢中期の建築規模は広大で、より高等なクラスに属すであろう、後漢から唐代には多くの修繕を行い、現存の石垣などの建築遺跡は唐代に属す。廟周家村の版築の台基には嘗て登臨(物見)の東屋の建築があり、遺物からは秦、前漢両時代の区分ができる。建築遺跡付近の窯跡(かまあと)で焼成された器物は、建築遺跡で使用されている材料と形式が相当しており、建築材料もあるいは当地で焼成されたものである。

威海市の成山山頂は岩石が壁のようにそそり立つ岬で、嘗て殷末周初の祭祀の遺留物が出土している。秦漢時期の建築規模は拡大し、各種の建築が入り乱れ、ずらりと並んで、情趣(じょうしゅ)に富んでいた。遺跡は深刻な破壊を受けているが、亭、立石、祠廟、祭礼場所など、様々な機能の組み合わせを見出すことができる。

瑯琊台刻石

土墩墓

四時主の祠は青島市黄島区の瑯琊台に位置し、歴年の調査と研究を経て発見され、祠堂と祭祀の遺跡は大小二つの版築基壇から構成され、陽主、月主、日主の遺跡の構成方式を参考にすると、瑯琊台大台は祠廟と皇帝の駐蹕(滞在)の場所、小台は祭祀場所に接近している可能性がある。

考古遺物の発見を経て、大台の仕様年代は秦、前漢早期、前漢中晩期など多くの時期を経歴している。ほかに、瑯琊台西北の祝家莊遺跡からは「千秋万歳」の瓦当、陶製水道管などの建築材料が出土しており、器物の形成と、装飾は瑯琊台出土の前漢中晩期の器物に相当し、遺跡周囲にはまた前漢中晩期の大型高級墓葬が分布しているので、祝家荘遺跡は瑯琊郡の遺址、あるいは漢の宣帝が駐蹕した場所である可能性がある。

更に、臨淄旧城内の劉家寨発掘で出土した封泥(封印のある泥印)の中には「斉祠祀印」があり、明らかに政府方は専用の祭器機構を設立したという有力な証拠である。

八主祠が設置された年代に関して、司馬遷は『史記』では既に「其の祭りは絶え、その起こる時を知るは莫し。」と言っている。所在の各地点、春秋晩期はともに異国の所属であり、莱国は春秋晩期に斉に滅ばされ、陰主、月主、日主などの祭祀は僅かに斉の勢力範囲に入った。

泰山付近はもともと魯国の地域で、斉人の所有となったのは更に遅かった。陽主が属した紀国も斉の消滅後に組み入れられ、魯の荘公四年(紀元前690年)に、斉の襄公が紀を討ち、紀国は滅亡した。四時主の祭祀祠は今の黄島区瑯琊台は、かつて莒国に属し、八主の設置時期は異なるので、大変確定が難しい(先史時期の想定)。斉国が南に泰山、東に瑯琊、芝罘、成山、西に清河、北に渤海まで拡張すると、八神の八箇所の祭祀地点は全て斉の地域となった。元々不同の諸侯の国に分属した各種の神祇(じんぎ)は、この時やっと斉国に整合(せいごう)され八主として祭祀された。司馬遷が八神を数え立てる時、即ち本来斉地方を中心に方位を叙述しており、いわゆる「斉地八神」の概念は戦国晩期にやっと形成されたもので、このように八主祭祀の区域は泰山付近と膠東半島に分けることができる。

初期の中国の祭祀は、神々、鬼神と関係があり、甲骨文中の祭祀の大部分の内容は神霊と鬼神に関するものであり、平安のために占いをしました。春秋時代にいわゆる礼崩楽壊なので、天との交流の方法が変化し、元の体系は操作されていないために、孔子様が礼を失って民間に礼を求める状況があります。宇宙問題に関する考え方や核心も変化しました。戦国時期、諸侯との合併の様相を顕わし、自己防衛と発展のために、諸子の学説が融合し、その方向性は国を治める方策でなければならない、いわゆる「百家殊業、皆務于治」。『管子』『吕氏春秋』『易経』などは、学術思想を意識形態(イデオロギー)に転換し、学術政治思想に基づく新しい社会システムを構築した代表作とも言える。八主祭祀は、具体的な創始者を特定できなかったが、ほぼ斉国稷下学宮の黄老派に属していた。司馬遷は、斉国稷下学宫は事蹟が非常に曖昧な行為の鄒衍に帰した。鄒衍は斉国稷下学宮の重要なメンバーであり、彼は諸国に大人気があります。彼が使用した「五徳」という術語は五行に似ており、明らかに幾つかの物質的な要素が含まれています。彼らは、宇宙が神様によって創造することに同意しません。正確な宇宙官が金、木、水、火、土などの要素に結びついており、実際には自然観であり、深い陰陽の考えを持っていた思想がある。

中国の祭祀系統は大きく二種類に分けられ、一つは祖先の血縁系統、二つは天神地祇の神々である。八主祭祀の系統は本質から言えば、中国の伝統上重要とされる人神系統の祖先崇拝とは異なり、また単純なある自然神とも異なる。

それは東方の思想家が封建制度の損壊と崩落を経歴して背離改変の後に、人に対して、人の依頼する所の自然環境及び人が自然環境にある地位の為に創造する所の精神体系である。戦国時期には、血縁関係が薄弱に変化し、諸侯の国家間で征伐が止まず、国亡と宗族の滅亡がしばしば発生し、周の天子はただその表面の「天下共主」の象徴意義を維持するしかなかった。血縁関係の維持と秩序崩壊の社会現実に直面して、思想界では血縁関係を基礎とする祖先祭祀のほかに新たな宗教的支持を求めた。八主の祭祀地点の選択は、各地はもともとある神祠を利用して八主の祭祀に対応させ、地点の方位配分も暗に陰陽の区分を含む。秦は血縁上は周のような「親族の国」ではなく、軍功により分封され、最初は追封され諸侯とし、政治的基礎は論功行賞であり血縁を以て基礎とする世卿世禄制ではなかった。商鞅の変法(政治改革)中の軍功二十爵は秦が六国を統一した基礎であると認められている。漢は秦の制度を継承し、王朝の支配に対して再び血縁関係に依存せず、地縁政治により主導されており、皇帝権力の元で郡が県を統治する二段の行政制度が実行された。

秦の始皇帝は革新的な帝国を建国し、多方面で周の天子とは全く違う統治方式を形成し、天下に新しい時代が来たと公告することを望んだ。

彼は自ら全国を巡視したが、しかし、西に行くのと東に行くのでは、政治的な意味が全く違った。西に行くのは、元々秦国の国民だった人々を慶賀するため、特に宇宙の神に天下統一したと告げるためだったと理解することができる。これとは逆に東に行くのは、明らかに威嚇性があり、征服された人々と神に征服したと宣告するためだった。

秦始皇帝は瑯琊郡を設立する目的で3万世帯に瑯琊台に移住するように命じことがあるが、斉の土地の支配を強め、斉の移民を鎮圧するためである。秦始皇帝が瑯琊に到着した後、大変喜び、前後で3か月もの長きにわたり滞在した。大変珍しい事である。そして、秦始皇帝は、東方に聳える泰山石刻、瑯琊石刻、碣石石刻のようなすべての山の石に秦の徳を称える碑文を刻んだ。大規模な祭祀活動は、帝王が神に通じる特権の一つである。『史書・封禅書」は各種等級の祭祀の範囲を規定している:「天子祭天下名山大川、五岳視三公，四瀆視諸侯，諸侯祭其疆内名山大川」。秦の宗教政策は、従来のものの維持と秦が元々持っていた宗教祭祀外への突出にあり、各諸侯国の山川祭祀を全面的に受け入れるが、神に対する祭祀を通して、領土の占有に対する独り善がり(ひとりよがり)の意思を強く標榜するものである。

秦の祭祀は二つの要素の組み合わせたもので、一つは秦の固有の祭りを取り入れたもの、もう一つは東方の斉の地の封禅がある。秦始皇帝の東方行幸の理由は、瑯琊台の石碑に非常に明確に書かれている:「東撫東土，以省士卒。事巳大畢，乃臨于海」

このような刻銘は特定の場所に置かれることで、人々に広範に知らしめることで、また文物の痕跡は皇帝の重要な儀式を慰留して、いわゆる巡狩の功は具体的な体現を得ることができる。

当然、秦の始皇帝は東方に対し多くの安心できない部分があり、術師は天象を見て東方に紫の気が在ることを感じ、取り代わるものの出現を恐れ、彼は常々に鎮圧に行くことを巡遊の目的であった。漢初の人心の目中の斉地は重要中でも重要で、地位もまた関中に次いだ。

「夫斉の地、東に瑯琊、即墨の饒(ゆたかさ)有り、南に泰山の固(かた)き有り、西に濁河の限り有り、北に渤海の利有り、地は方二千里、戟(げき=兵)百万を持ち、県は千里の外に隔てて、斉は十二を得。親・子弟に非ずんば、斉に王とせしむるべきもの莫し」。

秦の皇帝と、漢の武帝は巡狩の先導と、封禅に来るのを利用して東方に対する計略を実施し、彼らは長生不老の術に夢中になり、君主の左右に伴い政治的に生存する方法に精通し鍛え上げた東方思想家で、これらの人は彼らの宗教思想を売込みに成功している。文献によれば、天主祠は未だに秦漢皇帝の祭祀を受けておらず、秦の始皇帝は嘗て梁父に封禅して、漢の武帝は梁父に至り祠の地主を拝礼した。陽主祠のある芝罘は、秦の始皇帝は嘗て三度訪れ、秦の二世も嘗て出遊し、また二世の元年には自ら訪れ、漢の武帝も親しく来臨した。日主祠のある成山は、秦の始皇帝が嘗て二度くらい行幸、漢の武帝の行幸は数知らなかった。秦の始皇帝、秦の二世皇帝、漢の武帝は嘗て何度も四時主の祠がある瑯琊台を訪れた。漢の宣帝は寿良に兵主を祀り、曲城に三山八神を祭り、陽主、月主、日主、四時主の全てを祀った。

秦漢期の祠畤の主流は戦国期あるいはそれより古い祭祀を引き継いだものがほとんどで、雍城は秦漢期の祭祀の中心であり、前王の宗廟と高いレベルの祭祀があったため聖都となった。八主を入れたことで、祭祀の対象者の地位が上がったものもあった。

しかし八主祠の祭祀の目的は、東方の祭祀体系を帝国の主流祭祀に組み入れることを宣言するのに加えて、斉・燕の方士に唆されて、不老不死の霊薬を外部に求め、不老不死の願いを叶えることであったのである。秦の初期の術者は皇室を広範な影響を持っていて、始皇帝の東への巡狩は海上に行き、明らかに方士の唆しを受けて、彼自身も不老不死の思念に満ちていた。韓終に不死の薬を求めたが、彼は天と通ずる祭祀権力をしっかり掌握し、皇帝が来れば祭祀を行い、皇帝が来なければ祭祀を行わない制度を作った。祭祀の目的である『漢書・天文書』には、「神霊鬼神を祭祀、天の加護を祈る」とある。多くの祭祀の活動の権力は地方に分割することができ、地方の諸侯は祭祀することができ、前漢の初年には「名山大川は諸侯にいて、諸侯は各自奉祀して、天子に官は領さなかった」のである。八主祠の祭祀は明らかに名山大川の上にある。始皇帝が始めた皇帝祭祀は、表向きには八主祠の地位を高めたが、実際には皇帝と天との連絡路であったのだ。「天斉」はもともと斉の国の祭祀の対象であり、「天斉淵」は泉の水であり、これを天の腹の臍と考えて天下の中心にあることを象徴するように考えた。この考えは都の長安に借用され、長安の都の外で現在、人が天斉と呼ぶ山地の上に巨大な坑を主体とする遺跡群が発見され、「天斉」に倣って祭祀を行ったため、坑を掘って天の腹のようにして天下の中心とした。これらの祭祀対象の地位、祭祀の内容と形式は、時代によって社会環境の変化に応じて変化した。

泰山付近の大汶口文化出土した文物上の刻画符号

沂南罗圈峪村出土した石璋

山川祭祀の合法性と神聖性は秦の始皇帝の統治時期に認められたが、秦の始皇帝は八主の祭祀を同等の重要な地位に引上げたが、彼は重要性を区分する斉地方の八主の祭祀を同様の重要な位置に抜擢し、斉地八主の神聖性を護衛した。漢初の政権もこの種の伝統を継承し、しかし実際の運営中には表現に不均衡があり、八主をトップとする祭祀体系は皇帝巡幸の時に更に具象的な意義があった。漢の武帝の目標はおそらくは祭祀活動を通して統一の政治局面を強化させることであった。この種の東西に対峙する祭祀の構成は五岳四川の制度の出現に打破され、漢の宣帝は八主の祭祀行為を最後とし、あるいは東方を代表する祭祀成語の終結であったのかもしれない。成帝の時代には儒家の人物が要職を占拠し、皇帝の生み出す重要な影響に対して、彼らは儒家(魯)の理想に基づいてとして国家祭祀の制度を設計した。一切の祭祀対象は排除あるいは調整され、強調される理由は祭祀費用の増加や、国家経済の重荷に堪えず、実際に理念が変更されたのは、首都長安をめぐる祠廟を新設し信仰の祭祀制度が確立した結果である。

総じて言えば、王莽の郊祭制度は儒家思想が優勢を完全に占拠した結果で、彼らは郊祭制度の建設は儒家が主導した思想体系で、しかも後者は二千年来の儒教の経典の学問の重要な内容の一つである。

郊祭制度:正月の南郊の天地合祭は皇帝により自ら祭祀し、そのほかの南祭、北郊の祭祀の職能はこれより分解した。四時主の祭祀あるいは本来の内容を継承した。そのほかの祭祀は民間信仰に陥り、祭祀活動は見え隠れしつつ、長いあいだ維持した。

斉の八主祭祀は大陸で次第に弱くなり、ただし、斉の移民によって韓半島(後の百済、新羅)と日本列島の八主祭祀が却って盛んに行われています。日本の『古事記』の源流は斉の八主信仰の後続の可能性があります。